高市首相、FOIP改定で「経済安保」を前面に ──トランプの西半球シフトとどう向き合うか

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高市首相、FOIP改定で「経済安保」を前面に ──トランプの西半球シフトとどう向き合うか

Title: PM Takaichi to Unveil Upgraded FOIP Strategy with Economic Security Focus

Summary: PM Takaichi is expected to announce a revised FOIP in her February 20 policy speech, building on former PM Abe’s original concept. The new framework prioritizes economic security, including supply chain diversification and joint AI development. Meanwhile, the Trump administration’s NDS puts Western Hemisphere defense first, scaling back Indo-Pacific engagement — highlighting a growing strategic gap between Japan and the U.S.


高市早苗首相が2月20日の施政方針演説で、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の改定版を打ち出す方向で最終調整に入ったことが、読売新聞の報道で明らかになった。安倍晋三元首相の提唱から10年の節目に、経済安全保障を前面に据える刷新となる。

安倍構想からの進化

FOIPは2016年8月、安倍首相(当時)がアフリカ開発会議(TICAD VI)で提唱した。太平洋からインド洋、アフリカに至る広域を「法の支配」と「航行の自由」で結び、中国の「一帯一路」に対する代替秩序を示す構想を指す。米国のトランプ第1期・バイデン両政権にも採用され、日本発の外交コンセプトとして異例の浸透を果たした。2023年には岸田文雄首相(当時)が気候変動や食料安保を加えた4本柱に再編している。

高市版は(1)経済基盤の強化、(2)経済成長、(3)安全保障連携の3本柱で構成される。最大の特徴は、中国のレアアース輸出規制を念頭にサプライチェーン多角化を掲げ、中国製AIの普及を世論工作リスクと捉えて同志国とのAI共同開発を盛り込んだ点だ。安保面ではOSA(政府安全保障能力強化支援)によるASEAN連携強化を打ち出す。

米国の「西半球シフト」との齟齬

この改定が米国の戦略転換と正面からぶつかる点は見逃せない。トランプ政権が1月に公表した国家防衛戦略(NDS)は「モンロー・ドクトリンへのトランプ・コラロリー」を宣言し、西半球の防衛を最優先に掲げた。中国の優先順位は2つ目に格下げされ、台湾への言及は消えた。FOIPは日米同盟を基軸とする設計だけに、米国のインド太平洋コミットメント後退は構造的な課題となる。

ただし、高市版が経済安保や包括的及び先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)※ 推進を前面に出したのは、米国の後退を織り込みつつ日本自身が秩序の推進力になるという意思表示とも読める。安倍元首相が構想した原点は「日本が国際秩序をつくる側に立つ」という宣言だった。その遺産をどこまで実行力に転換できるか、20日の演説が試金石となる。

※CPTPP:環太平洋パートナーシップ協定(TTP)から米国が離脱した後、日本が主導して残る11か国で2018年に発効させた自由貿易協定。現在は英国も加わり12か国が参加する。関税撤廃や投資ルールの共通化を通じ、インド太平洋地域の経済秩序を支える枠組みとなっている。

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