1月17日、トランプ米大統領は欧州8カ国への追加関税を発表した。この直前、デンマークの要請を受けた欧州NATO諸国が「アークティック・エンデュランス作戦」としてグリーンランドへ軍事要員を派遣していた。トランプ政権は対抗措置として、グリーンランド購入合意が成立するまで2月1日から10%、6月1日には25%へ関税を引き上げると宣言した。
英紙フィナンシャル・タイムズなどの報道によると、EUは930億ユーロ(約17兆円)規模の報復案を検討した。デンマークのフレデリクセン首相は「もし米国がNATO加盟国への軍事攻撃を選択すれば、NATOを含め第2次大戦後に築かれた安全保障のすべてが停止する」と警告した。
ダボス会議での演説と「アイスランド」混同
トランプ大統領は1月21日、スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説。武力行使の可能性を排除する一方、「NATOはグリーンランドに対する完全な権利を米国に認める義務がある」と主張した。
しかし演説中、トランプ氏はグリーンランドを「アイスランド」と何度も言い間違えた。ホワイトハウスのレビット報道官は、演説原稿ではグリーンランドを「ピース・オブ・アイス(氷のかけら)」と呼んでいたため混同していないと反論したが、説得力を欠いた。
むろん聴衆の反応は冷ややかだった。満員の会場は1時間以上に及ぶ演説の大半の時間、不気味なほど静まり返っていた。AFP通信によると、聴衆の一人は「彼は新保守主義者(ネオコン)から新帝国主義者(ネオインペリアル)になった」とささやき、別の聴衆は帰り際に「彼は頭がおかしい」と述べたという。
NATO事務総長との会談で急転直下の関税撤回
ダボス会議でトランプ大統領はNATOのルッテ事務総長と会談した。会談後、トランプ氏は「将来の合意の枠組み」に達したと主張し、2月1日から予定していた関税の発動を見送った。
トランプ氏は記者団に「望んでいた全てを手に入れた」と語り、NATO報道官は「ロシアと中国に経済的・軍事的な足場を築かせないことを目的として協議を進める」と説明した。米紙ニューヨーク・タイムズによると、グリーンランドの米軍基地のみを米領と認める構想が浮上している。
しかし「合意の枠組み」の詳細は不明確で、デンマーク政府やグリーンランド自治政府からは具体的な合意内容についての言及はない。関税撤回により当面の危機は回避されたが、NATO同盟国間の亀裂という構造的問題は残されたままだ。
