ウクライナ国防省情報総局(GUR)は、撃墜したロシア軍の自爆型ドローン「シャヘド136(ロシア名:ゲラン2)」の分析結果を、同局が運営する「War & Sanctions」ポータルで公開している。その分析から、ロシアとイランが協力してドローンの改良を進め、AI搭載や通信機能の強化など、より高度な攻撃能力を獲得しつつある実態が明らかになった。
AI搭載で自律飛行能力が向上
GURが2025年6月にウクライナ北東部スームィ州で撃墜されたMSシリーズのシャヘド136を分析したところ、機体素材と内部構造からイランで製造されたことが確認された。しかし、設計上の変更や性能向上の痕跡から、イランとロシアが共同でアップグレードを行っていることが示唆されている。
注目すべきは搭載された電子機器の高度化だ。ドローンにはNvidia のJetson Orinという高性能AIチップが搭載されていた。これは映像を処理し、自律的に判断を下すためのコンピュータで、ロシア製のV2Uドローンにも同様のチップが使われている。さらに、ロシアが以前公開したものに似た赤外線カメラも装備されていた。
GPS妨害への対策も進んでいる。衛星から位置情報を受信するNasirナビゲーションシステムは8チャンネル構成にアップグレードされた。回収された機体では、GPS信号を2つの周波数帯(L1とL5)で受信できる4素子アンテナが接続されていた。以前のバージョンでは、中国製に似た8素子の円形アンテナが確認されていた。これにより、敵の電波妨害を受けても正確な位置情報を維持しやすくなる。
また、無線モデムと通信システムも搭載されており、映像やドローンの状態データの送信、さらには複数のドローンが連携して飛行する「スウォーム(群れ)」攻撃の調整に使用されていると見られる。単純に目標へ突っ込むだけでなく、状況に応じて判断し、仲間のドローンと協調する能力を獲得しつつあるということだ。
GURはこの動向について、「イランとロシアは単に技術を移転しているのではなく、共同で開発・改良を行っている。その影響はウクライナでの戦争にとどまらない。戦場で実証されたロシアの技術革新によって強化されたこれらの兵器が、中東全域でイランの不安定化行動を助長する恐れがある」と警鐘をならす。
日本 を含む国際的な部品調達網を活用
シャヘド136は安価な自爆ドローンとして知られるが、その内部には世界各国から調達された電子部品が使われている。ウクライナの国家汚職防止庁によると、シャヘド136には55個のアメリカ製部品、15個の中国製部品、13個のスウェーデン製部品、6個の日本製部品が使用されている。
ウクライナの専門家の分析では、日米欧30社以上の製品が確認されており、具体的にはアメリカのアルテラ社製プロセッサ、アナログ・デバイセズ社製無線モジュール、マイクロチップ・テクノロジー社製チップなどが含まれる。 日本製部品はメーカーは不明だが、カメラや汎用リレー、サーボモーターなどが挙げれられている。
中国製部品への依存も顕著だ。GURが公開した別の分析では、ロシアが偵察や囮として使用している新型ドローンの部品がすべて中国製であることが判明した。飛行を制御するコンピュータ、自動操縦装置、位置情報を取得するナビゲーションモジュール、アンテナ、速度センサーなど、機体システムの約半分が中国のCUAV Technology社製だった。同社はドローン用システムの開発・製造を専門としており、2022年10月にウクライナとロシアへの輸出制限を発表したが、第三者を経由した供給が続いているとGURは指摘している。
このように、ロシアは国際的な制裁の網をかいくぐりながら部品を調達し、イランとの技術協力でドローンの性能を向上させている。ウクライナ戦争は、現代の紛争において安価なドローンがいかに重要な役割を果たすか、そしてその製造・調達がいかにグローバルなサプライチェーンに依存しているかを浮き彫りにしている。


