米国内からもトランプ政権に批判が集まっている。マイケル・シュミット(レディング大学国際法教授)、ライアン・グッドマン(ニューヨーク大学ロースクール教授)、テス・ブリッジマン(同大学上級研究員)が2026年1月5日、オンライン法律誌「ジャスト・セキュリティ」に発表した論文は、トランプ政権によるベネズエラ軍事作戦とマドゥロ大統領拘束が国際法に明確に違反すると結論づけた。
論文は三つの重大な国際法違反を指摘する。
第一に、国連憲章が禁じる武力行使の違反だ。武力行使が正当化されるのは国連安保理の承認か武力攻撃への自衛の場合のみだが、米国は麻薬密輸を「武力攻撃」とみなして自衛権を主張する。しかし論文はこれを否定する。麻薬と最終的な薬物死亡の因果関係はあまりに間接的で、麻薬は米国内で流通組織を経て販売され、購入は任意だ。
ベネズエラ政府の関与はさらに間接的で「武力攻撃」には該当しない。1989年のパナマ侵攻時には正統政府の招請や米国民への差し迫った危険があったが、今回は存在しない。
第二に、ベネズエラの同意なき域外法執行は主権侵害である。国際法は執行管轄権を自国領域に限定し、他国領域での執行には同意が必須だ。1960年のアイヒマン拉致事件で国連安保理はイスラエルに賠償を要求した。米国自身も1989年に「同意なき逮捕は領土保全の原則に違反する」と表明している。
さらにマドゥロは現職国家元首として絶対的免責特権を持ち、国際司法裁判所も「国家元首は他国の刑事管轄権から免責される」と判示している。
第三に、この作戦で米国とベネズエラ間に国際的武力紛争が発生した。ジュネーブ条約の下、武力紛争の存在は事実問題であり、敵対行為があれば成立する。その結果、ベネズエラ軍は米国軍を合法的に攻撃でき、マドゥロ夫人や米国内のベネズエラ人はジュネーブ条約の保護を受ける。
執筆者のグッドマンは武力行使の国際法分析で知られ、シュミットは武力紛争法の世界的権威、ブリッジマンはオバマ政権で国家安全保障会議法律顧問を務めた。論文は「国際法秩序の健全性に長期的影響を及ぼす」と警告している。トランプ政権のみならず、自衛権の恣意的拡大が東アジアでも適用されるリスクがあり、国際法秩序の動揺は日本の安全保障環境を不安定化させる可能性がある。

