中国4大ポータルサイトの一つ「網易(NetEase)」が12月27日、日本人による中国でのスパイ活動と米国の関与を強調する記事を掲載した。記事は過去に中国当局が摘発したとする複数の事案に言及しているが、日本側は学術調査やビジネス活動であったと主張しており、米国の諜報活動と結びつける主張には具体的根拠が示されていない。
記事が取り上げた事案のうち、2005年9月の新疆ウイグル自治区での事件は実際に報道されている。大手建設会社の社員を含む日本人2名が、許可なく軍事施設を含む地域で高精度GPS装置を使用した精密測量を行っていたとして、国外退去処分や罰金刑を受けた。また2010年前後には江西省で、日本人グループが考古学調査を名目に測量活動を行っていたとして調査を受けた事案も報じられている。2015年前後にも浙江省や中朝国境地域で日本人が拘束され、スパイ罪で実刑判決を受けたケースが複数存在する。
これらの事案の多くは、中国が2014年11月に反スパイ法を制定する以前に発生している。当時、包括的なスパイ活動取締法が存在せず、こうした外国人による測量活動や情報収集行為が、反スパイ法制定を後押しする一因となったことは否定できない。中国当局はこれらを「国家安全保障上の脅威」と位置づけ、法整備の必要性を訴える材料として活用してきた。
しかし、日本政府や関係企業は一貫して、これらは学術調査や通常のビジネス活動の一環であり、スパイ活動ではないと主張してきた。中国の法執行基準と国際的な見解には大きな隔たりがあり、中国側が「スパイ行為」と認定した活動の多くは、他国では通常の経済活動や学術研究と見なされる可能性が高い。
中国は2014年の反スパイ法制定以降、その適用範囲を拡大し続けている。2023年の法改正では、「国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品」の取得・提供が対象に加えられ、通常のビジネス活動や学術交流もスパイ行為と見なされるリスクが高まっている。
さらに問題なのは、網易の記事が米国との情報協力を強調している点だ。記事は「日米共同情報分析組織(BICA)」に言及し、日本のスパイが収集した情報が米国に流れていると主張するが、民間人による測量データが実際に米国の軍事情報機関に提供されたという具体的証拠は示されていない。
現在は偵察衛星や商用衛星の性能向上により、地上でのHUMINT(人的情報収集)の重要性は以前より低下している。民間人が携帯できる測量機器で得られる情報の軍事的価値は限定的であり、網易の記事が主張するような「ミサイル攻撃の精密座標ライブラリ」として直接利用できる可能性は低い。
今回の記事は、中国国内の愛国心や警戒心を喚起する目的で書かれたものと見られ、実際の事件を基にしながらも、その性質を誇張し、根拠のない米国との陰謀論を付加している。

