中国軍機が豪哨戒機に危険接近、南シナ海で緊張再燃

中国軍機が豪哨戒機に危険接近、南シナ海で緊張再燃

オーストラリア国防省は10月19日、、南シナ海の国際空域を哨戒飛行中の同国空軍P-8A哨戒機に対し、中国空軍のSu-35戦闘機が「危険な接近」を行ったことを明らかにした。中国のSu-35は、P-8Aの約30メートルまで接近してフレア2発を投下、航空機と乗員の安全を脅かした。航空機の損傷や乗員の負傷はなかったという。

マールズ国防相は豪メディアのインタビューで「2度にわたりP-8の至近距離で照明弾が発射された。距離が極めて近く、危険でプロフェッショナルではない」と説明し、大使館を通じて正式に申し入れを行った。一方、中国国防部の報道官は「オーストラリア軍機が西沙諸島領空に不法に侵入したため、正当で抑制された警告措置を取った」と反論、オーストラリア側の主張を「事実を歪曲したプロパガンダ」と非難している。

2021年のAUKUS発足以後、オーストラリア軍は南シナ海への哨戒を継続してきたが、人民解放軍は強硬な対応を繰り返している。2022年2月には哨戒飛行中の豪P-8に中国海軍艦艇がレーザーを照射、2023年11月には駆逐艦のダイバーに中国海軍艦艇がアクティブ・ソナーを照射しダイバーが負傷する事案も発生した。

オーストラリアが2023年3月に原潜保有の方針を発表すると、中国国防部は「地域安定を崩壊させる核拡散」と非難、外交部も「国際規範を無視した無責任な行為」と批判を展開した。豪の原潜保有表明から2か月後、習近平主席は南部戦区海軍部隊で空母や戦略原潜を視察し、「複雑な脅威に適切に対処し、地域の安定を維持せよ」と訓示した。

中国は、AUKUS、QUAD、米比同盟などの南シナ海へのコミットメントを米主導の「対中封じ込め戦略」と位置づけ非難している。南シナ海における摩擦はフィリピンやベトナムがステークホルダーとして加わり、多国間化した状況が続く。ホットラインや米中軍高官対話は機能不全の状態にあり、偶発的な衝突のリスクが存在する。南シナ海を巡る軍事的な対峙は厳しさを増している。

(写真:オーストラリア国防省)

ライタープロフィール

薗田浩毅
SONODA Hiroki
Seculligenceアナリスト、中国軍事研究家

長崎県出身、元1等空尉。航空自衛隊の司令部や情報専門部隊、防衛省情報本部で中国(軍事)を担当する情報幹部として活躍。退職後、軍事ライターとして「世界の艦船」「丸」「Jウイング」「軍事研究」などに寄稿。2025年11月にSeculligenceアナリストに就任し、「薗田浩毅の中国深層レポート」を連載する。