Title: Spy Museums Around the World: Turning the Shadows of Espionage into Cultural Experiences
Summary: The International Spy Museum’s PR director discussed the museum’s mission in a PRSA magazine interview. Spy-related museums also exist in Berlin, Tallinn, London, and beyond, offering the public a cultural gateway into the hidden history of espionage.
米ワシントンD.C.にある国際スパイ博物館(International Spy Museum、通称SPY)の広報責任者アリザ・ブラン)が、米PR協会の機関誌『Strategies & Tactics』2026年2月号のインタビューに応じ、博物館の使命について語った。SPYは2002年の開館以来、諜報活動の歴史と技術を一般市民に伝える世界最大規模の専門博物館として知られる。「スパイ」を娯楽としてだけでなく文化的・歴史的資産として発信する動きは各国に広がっている。
「物語」で伝えるスパイ活動
SPYは独立した非営利組織で、9,281点の収蔵品のうち約1,000点を常設展示し、ギネス世界記録にも「世界最大のスパイ博物館」として認定されている。
2019年にラファン・プラザの新館(約1万3,000平方メートル)へ移転し、展示規模を倍増させた。KGBの口紅型ピストルやエニグマ暗号機、映画『007 ゴールドフィンガー』のアストンマーティンDB5など、実物のスパイ道具が並ぶ。来場者はRFID技術による「アンダーカバー・ミッション」で偽装身分を受け取り、暗号解読やデッドドロップの発見に挑む体験型展示が人気だ。
2026年3月には新たな特別展「カモフラージュ:欺くためのデザイン」が開幕する。入場は国籍を問わず可能で、日時指定の事前予約制。早期購入で最大30%の割引が適用され、7歳未満は無料である。
9年以上SPYで広報を務めるブランは、諜報が「芸術・文化、国家安全保障、ニュースの交差点にある」と語り、ストーリーテリングの重要性を強調した。データだけでなく人間的な要素を加えることで初めて人は学び、理解するというのが彼女の信念だ。
各種の信頼度調査で博物館はニュース機関や政府機関を上回る信頼を得ており、「発信する情報が正確で、人々の世界理解の助けになるよう心がけている」という。
冷戦の記憶を刻む各国の施設
「スパイ博物館」はワシントンだけの現象ではない。冷戦期に「スパイの首都」と呼ばれたベルリンには、ドイツスパイ博物館(Deutsches Spionagemuseum)がある。
2015年にポツダム広場近くに開館し、かつての東西ベルリンの境界線上という立地自体が歴史的メッセージを帯びる。エニグマ暗号機やシュタージ(東ドイツ国家保安省)の監視機器など600点以上のオリジナル資料を収蔵し、レーザー迷路や嘘発見器といった体験型展示も備える。2020年には欧州ミュージアム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされた。展示はドイツ語・英語の二言語対応で、外国人も問題なく楽しめる。
旧ソ連圏では、エストニアの首都タリンにあるホテル・ヴィルの「KGB博物館」が知られる。公式には22階建てとされたホテルの23階に、KGBが撤退時に残した盗聴機器がそのまま保存されている。英語ガイドツアー(約1時間)で外国人も参加可能だ。チェコのプラハにも個人コレクションによるKGB博物館がある。
英国ではブレッチリー・パークが暗号解読の聖地として世界的に有名だ。第二次大戦中にアラン・チューリングらがエニグマ暗号を解読した拠点で、現在は博物館として一般公開されている。帝国戦争博物館でもMI6やSOE(特殊作戦執行部)の実物資料を展示しており、英国諜報史に触れることができる。
フェイクニュースや情報工作が日常化した現代において、「情報とは何か」「真実はどう守られるのか」を体感的に学べるこうした施設の意義は小さくない。旅先でこれらの都市を訪れる機会があれば、「影の世界」を覗いてみるのも一興だろう。



