「スパイ王子」がトランプ家族企業の49%を秘密取得──AI半導体輸出と引き換えか

「スパイ王子」がトランプ家族企業の49%を秘密取得──AI半導体輸出と引き換えか

Title: UAE ‘Spy Sheikh’ Secretly Acquired 49% of Trump Family Crypto Firm Before AI Chip Export Approval

Summary: Sheikh Tahnoon bin Zayed Al Nahyan, the UAE’s national security adviser, secretly purchased a 49% stake in the Trump family’s World Liberty Financial for $500 million just four days before Trump’s inauguration, the Wall Street Journal reported. Months later, the Trump administration approved the sale of up to 500,000 advanced AI chips annually to the UAE, raising serious conflict-of-interest concerns and calls for congressional investigations.


アラブ首長国連邦(UAE)の国家安全保障顧問で「スパイ王子」の異名を持つタフヌーン・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン王子が、2025年1月のドナルド・トランプ大統領就任直前、トランプ家族の暗号資産企業ワールド・リバティ・ファイナンシャルの49%株式を5億ドル(約750億円)で秘密裏に取得していたことが明らかになった。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が2026年2月1日、企業文書と関係者の証言に基づき報じた。

就任4日前に署名、1.87億ドルがトランプ家族へ

WSJによると、タフヌーン王子の支援を受けた投資会社「アリヤム・インベストメント1」が2025年1月16日、トランプ大統領就任のわずか4日前に契約を締結した。署名者はトランプの次男エリック・トランプだ。

取得額5億ドルの半額が前払いされ、うち約1億8,700万ドルはトランプ家族が管理する事業体に、少なくとも3,100万ドルはトランプの中東特使スティーブ・ウィトコフの家族関連企業に流入した。契約に基づきアリヤムの幹部2名がワールド・リバティの5人制取締役会に参画し、同社は創業者以外で唯一かつ最大の株主となった。

外国政府高官が米国の次期大統領の企業に大口出資した例は、米国政治史上前例がない。WSJは企業文書を精査したうえで、この取引が公に開示されていなかったことも指摘している。

AI半導体5万個の対UAE輸出承認との時間的符合

この取引が深刻な利益相反の疑いを招くのは、その後の政策決定との時系列にある。

タフヌーン王子は以前からバイデン前政権に対し先端AI半導体の輸出を求めていたが、中国への技術流出懸念を理由に拒否されていた。しかし、トランプ大統領就任後の2025年3月、タフヌーンは同大統領及びウィトコフ特使と直接会談。同年5月、トランプ政権はUAEに対し年間約50万個の最先端AI半導体の売却を承認した。報道によると、その約2割はタフヌーン王子が率いるAI企業「G42」に配分される。

ワールド・リバティの広報担当は、トランプ大統領とウィトコフ特使はいずれもこの取引に関与しておらず、就任以降は同社の経営に一切携わっていないと否定した。ホワイトハウスも利益相反はないとの立場を表明している。

しかし法律専門家の見方は厳しい。ジョージタウン大学のキャスリーン・クラーク教授はWSJに対し「これは賄賂のようだ」と指摘。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は議会での調査を求め、CNBCの報道によれば「明白な腐敗だ」と断じた。

安全保障上の懸念

この問題は単なる政治倫理の域を超え、安全保障上の重大なリスクをはらむ。

G42はかつて中国の通信機器大手ファーウェイとの関係が取り沙汰され、バイデン政権がそれを理由に先端半導体の対UAE輸出を制限していた経緯がある。AIポリシー・ネットワークのピーター・ワイルドフォード政策責任者はABCニュースに対し、先端AI半導体が中国の手に渡れば「米国へのサイバー攻撃や自律型兵器の開発を可能にし、現在の軍事技術格差を縮める」と警告している。

大統領の個人資産が外国政府高官の財務的利害と直結する構造は、米国の対中東政策の独立性そのものを揺るがしかねない。トランプ家族のビジネスと湾岸諸国との関係は、カタールからの4億ドル相当の大統領専用機の供与問題に続く新たな火種であり、今後の議会調査の行方が注目される。

ライタープロフィール

Seculigence Editorial Department