ポーランド、軍事施設への中国製車両を進入禁止——テスラもNG、欧米で広がる「車輪のスマホ」への警戒

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ポーランド、軍事施設への中国製車両を進入禁止——テスラもNG、欧米で広がる「車輪のスマホ」への警戒

Title: “Poland Bans Chinese Vehicles from Military Facilities — Tesla Also Barred as Western Vigilance Grows Against ‘Smartphones on Wheels’”

Summary: Poland’s Ministry of Defense officially announced on January 20 a ban on Chinese-made vehicles entering military bases. Tesla, which manufactures in Shanghai and operates data centers there, is also subject to the ban. The move follows the government think tank OSW’s report “Smartphones on Wheels.” Modern smart cars collect location and video data through over 100 sensors and transmit it to cloud servers. Under China’s National Intelligence Law, companies are obligated to share information with the government, raising concerns about potential exploitation for military reconnaissance. Similar measures are spreading across Western nations: the UK has ordered EVs to park at least 3.2 km from RAF bases, Israel’s military has recalled approximately 700 Chinese vehicles, and the US has legislated bans on such vehicles at military installations.


ポーランド国防省は1月20日、中国製自動車の軍事基地への進入禁止措置を公式に発表した。副首相兼国防相のコシニアク=カミシュ氏は「ポーランドは国家安全保障を確保するため適切な措置を講じる」と述べ、英国など同盟国と連携して対応を進めていることを明らかにした。禁止対象は軍事施設及び隣接駐車場で、軍人の私有車両も含まれる。参謀総長ククワ大将の命令により即時発効となる見通しだ。

背景には、ポーランドの国策シンクタンク「東方研究センター(OSW)」が2025年12月に公表した報告書「車輪のスマートフォン」がある。

報告書は、スマートカーが収集するデータが軍事偵察に悪用されるリスクを指摘した。中国企業は国家情報法により、中国政府の情報収集活動への協力義務を負う。これは海外で取得したデータにも適用されるため、欧州を走る中国車のデータが中国当局、さらには中露の非公式同盟を通じてロシアに渡る懸念があるという。国防省は「祖国防衛法」第616a条を根拠に、画像・音声記録機能を持つ車両の進入制限を制度化した。

なぜ中国車が「動くスパイ」となりうるのか

ポーランドの防衛・サイバーセキュリティ専門メディア「CyberDefence24」は1月16日、ポーランド国内で発生した2件の具体的な進入拒否事例を報道した。

1件目は、軍経理部隊に勤務する兵士が2025年末に購入した中国ブランドの新車で、正規の手続きを経たにもかかわらず基地への進入を拒否された事例。2件目は、第1ワルシャワ機甲旅団において、民間人が所有するテスラ車が「テスラだから入れない」と進入を断られた事例だ。テスラは2019年から上海で車両を生産しており、中国国内にデータセンターも運営しているため、中国製車両と同様のリスクがあると判断された。

現代のスマートカーがなぜ「動くスパイ」になりうるのか。車両には平均100個以上のセンサーが搭載されており、GPS、カメラ、レーダー、加速度計などが位置情報、速度、周辺環境の画像・映像を常時収集している。これらのデータは車載テレマティクスシステムで処理され、携帯電話回線やWi-Fiを通じてメーカーのクラウドサーバーに送信される。

中国では2017年から政府運営の監視プラットフォームが稼働しており、EVメーカーは位置情報やバッテリー性能など最大61項目のデータをリアルタイムで政府に提供することが義務付けられている。OSWは「スマートカーが増えるほど、軍事施設周辺の交通量や経済活動レベルの把握が可能になる」と警告する。

ポーランドの措置を受けて、中国外務省報道官は1月19日の定例記者会見で「国家安全保障という概念の乱用は止めるべきだ」と反発し、輸出車両は現地法規に完全準拠しておりセキュリティ上の脅威はないと主張してた。

各国で進む中国スマートカー排除の動き

同様の措置は西側諸国で拡大している。英国は2025年4月、ファイブアイズの情報ハブを擁する英空軍ワイトン基地で、中国製部品搭載EVを施設から約3.2km以上離れた場所に駐車するよう指示。イスラエル軍は同年11月、将校車両約700台(主に奇瑞汽車製)を回収し、三菱など日欧車への切り替えを進めている。米国も2026年度国防権限法で軍基地への中国製コネクテッドカー進入禁止を法制化し、2027年モデルからソフトウェア規制を開始する。

日本では、自衛隊・在日米軍での同様措置は現時点で公式発表されていない。ただし政府は2018年にファーウェイ・ZTE製通信機器を省庁・自衛隊から排除しており、スマートカー分野でも今後議論が加速する可能性がある。

 

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