元米海軍兵士に対中スパイ活動で懲役16年8カ月の判決

元米海軍兵士に対中スパイ活動で懲役16年8カ月の判決

米司法省は1月12日、中国の情報機関に機密情報を売り渡したとして、元米海軍水兵ジンチャオ・ウェイ(Jinchao Wei/別名Patrick Wei、25歳)に懲役200カ月(16年8カ月)の判決が下されたと発表した。同被告は2025年8月に連邦陪審により有罪評決を受けていた。

SNSを利用したリクルート工作

事件の発端は2022年2月14日、ウェイがソーシャルメディアを通じて中国の情報機関員から接触を受けたことだった。情報機関員は当初、中国船舶工業集団に勤務する「海軍愛好家」を装っていたが、ウェイはスパイ活動の初期段階から相手の正体と動機を強く疑っていた。

接触から8日後の2月22日、ウェイは海軍に所属する友人に「中国の情報機関のレーダーに捕捉されていると思う」と打ち明けた。接触してきた人物について「極めて疑わしい」「艦船の整備サイクルに関心を持っている」と説明し、「毎日」埠頭を歩いて「どの艦船が停泊しているか」を確認してほしいと要求され、500ドルの報酬を提示されたことを明かした。ウェイは友人に「これは明らかにスパイ活動だ」とまで述べている。

友人はその連絡を削除するよう助言したが、Weiは翌23日、より安全と考える別の暗号化メッセージアプリに通信手段を移行し、情報機関員のためのスパイ活動を開始した。

2022年3月から2023年8月の逮捕までの18カ月間、ウェイは情報機関員の要求に応じて強襲揚陸艦エセックスの写真や動画を送信し、各種海軍艦船の位置情報を通知した。さらにエセックスの防御兵器について説明し、サンディエゴ海軍基地や他の基地に停泊する艦船の問題点を報告した。最も深刻だったのは、制限付き海軍コンピュータシステムから数千ページにわたる技術・運用情報を窃取したことだ。

ウェイは少なくとも30冊の技術・運用マニュアルを手渡している。これらのマニュアルには輸出管理警告が記載され、エセックスなどの動力、操舵、兵器管制、航空機・甲板エレベーター、損傷・事故対応に関する詳細な諸元が含まれていた。

トータルで約60冊のマニュアル、数十枚の写真及び関連文書が中国側に渡され、その対価として1万2000ドル以上を受け取っていた。

元米海軍水兵、ジンチャオ・ウェイ(米司法省)

元米海軍水平、ジンチャオ・ウェイ(米司法省)

巧妙化する秘密保持手法

裁判で証拠として提示された電話会話、電子メッセージ、音声メッセージからは、中国側の工作手法の実態が浮き彫りになった。

関係が深まるにつれ、ウェイは情報機関員を「アンディ兄さん」と呼ぶようになり、秘密保持のために複数の暗号化アプリを使い分け、メッセージとアカウントの削除を繰り返した。さらに72時間で内容が消滅する「デジタル・デッドドロップ」を利用し、情報機関員から提供された新しいコンピュータと電話を使用するなど、痕跡を消すための様々な手段を講じていた。

情報機関員はウェイの取り込みを進めるため、報酬を増額するとともに、ウェイと母親を中国に招待する旅行の提案なども行っていた。証拠として提示された手書きの領収書からは、ウェイが報酬を受け取るために作成し、情報機関員に送付していた実態も明らかになった。

逮捕後の取り調べでWei自身が認めたように、彼は数千ページの技術・運用マニュアルと輸出規制データを情報機関員に渡し、数千ドルを受け取ったことを認めた。さらに自らの行為が違法行為であると認識し、活動を隠蔽しようとしていたことも認めている。FBI捜査官が「情報機関員と何をしていたと表現するか」と尋ねた際、ウェイは「スパイ活動(espionage)」だと答えた。

この事件は南カリフォルニア地区で合衆国法典第794条のスパイ罪が適用された初のケースとなった。同法は国家防衛情報を米国に害を与える意図をもって、あるいは外国勢力の利益のために渡す最も深刻な事案にのみ適用される。

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Seculigence Editorial Department