防衛研究所、極超音速兵器の最新動向を分析——開発国増加と低価格化で拡散リスク

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防衛研究所、極超音速兵器の最新動向を分析——開発国増加と低価格化で拡散リスク

防衛省防衛研究所は1月6日、極超音速兵器をめぐる最新動向を分析したコメンタリーを公表した。有江浩一理論研究部政治・法制研究室所員がまとめた。

極超音速兵器はマッハ5以上の速度で大気圏内を飛翔し、高速飛翔中に機動できるため、現在の防御システムでは迎撃が困難とされる。米中露に加え、欧州諸国、日本、オーストラリア、インド、北朝鮮などが開発に名を連ねる。

米陸軍は2024年12月、地上発射型極超音速滑空体(HGV)「ダークイーグル」の最終飛翔試験に成功し、実戦配備が見込まれる。中国は2025年9月の軍事パレードで複数の極超音速兵器を披露し、折り畳み式の翼で抗力と揚力を調整できる飛翔体の実験も実施。ロシアは射程6,000キロメートルのHGV「アバンガルド」を戦略ミサイル部隊に配備済みだ。日本の防衛装備庁は、スクラムジェットエンジンを搭載する極超音速誘導弾システムの研究を進め、地上試験でエンジン作動に成功している。

コメンタリーは、極超音速兵器を「ゲームチェンジャー」とする議論がある一方、技術的困難性を指摘する見方も紹介。飛翔体表面の空力加熱が2,000度を超えるため、形状や素材開発など克服すべき課題は多いとした。迎撃方法としては、キネティック迎撃体による破壊や電子戦を用いるソフトキル方式が議論されており、ロシア・ウクライナ戦争ではウクライナ側が衛星航法信号への電波妨害とサイバー攻撃でロシアのミサイル命中精度を低下させたとされる。

今後の展望として、中国企業が気泡セメントなどを用いた低価格で大量生産可能な極超音速ミサイル「YJK-1000」を開発したと報じられており、小国や非国家主体への拡散リスクが高まる可能性を指摘。2024年にはイエメンの武装組織フーシ派が極超音速ミサイルを開発したとの報道もあった。米国は2025年11月の国家安全保障戦略で次世代ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構想に言及し、極超音速兵器の探知・迎撃システム開発を含めるなど、対応強化の構えを見せている。

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